ローン残積があってもマンションは売却できる!銀行員が上手に売却するコツを解説

ローン残積があってもマンションは売却できる!銀行員が上手に売却するコツを解説

「ローンが残っているマンションは売れるのか?」
これにもう少し加えると「ローンを貸している銀行が売却を許してくれるのか?」と意味と「築古マンションはそもそも売れるのか?」という2つになります。
そこでこの記事では、ローン残債があるマンションは売れるのか?という疑問に対し銀行員としてお答えします。

銀行は条件次第でローン残債があっても売却を認めます。
マンションも新築以外はすべて「築古マンション」なので、売れることは売れるが売れにくい、でもポイントと注意点を知れば上手に売れる近道になります。
住宅ローンで購入したマンションに住んでいる人、あるいは住宅ローン・マンション購入を検討している人はぜひ参考にして下さい。

ローンが残っているマンションの売却は、売却価格やローン残積によって対応が異なる

冒頭のフレーズを繰り返しますが、「ローンが残っているマンションは売れるのか?」という疑問には、ローンを貸している銀行が売却を許してくれるのか?と、築古マンションはそもそも売れるのか?という2つの意味があります。
そこでこの記事でも2つに分け、順に説明することにします。

なお記事では私が対応したAさんのケース(今回のテーマに関した会話形式)を挟んでいますので、銀行員が現場でどのような説明をしているのか?も参考にしてください。

Aさんの紹介

私が中古マンション購入の住宅ローンを融資した人
会社員で奥さんとお子さん2人の家族
勤務先の業績悪化でリストラにあいローン返済が苦しくなったので、売却して地方にある実家に移ろうと相談にいらっしゃいました

現在の状況はお話しした通りで、大変ですけどまだヤバい状態ではありません。だから今のうちにできることはしておきたいんです。そこで、さっそくですが銀行ではローンが残っていると売却を認めてくれないと聞いたんですが、ほんとうですか?

そうですか、いろいろとお困りなんですね。私自身も銀行員とは言え住宅ローンを借りている身なので、ご心痛はお察しします。ご質問のあった売却ですが、銀行は絶対に売却を認めないというわけではないので、そこはご安心ください。

へーそうなんですか?それは良かった

そうです、ただし売却までには注意点や必要事項もあるのでお話しさせていただきたいと思いますが、お時間はよろしいですか?

はい、今日は相談するために時間をとってきましたので、よろしくお願いします。

銀行が売却を認める条件

まず銀行が売却を認めるか?は「売る前に全部返せばOKですよ」という大原則があります。

銀行が売却を認める条件
  1. 自分で返せるなら問題なし
    自己資金で前もって完済してしまえば、そもそも売却していいか?を相談する必要がない
  2. 売って完済できるならOK
    売却資金でローンを全額返済できるなら、銀行は売却を認める
  3. 「オーバーローン」は2つの道に分かれる

問題は「売れてもローンが完済できないとき」

ここで問題になるのが3つめの「オーバーローン」の場合です。
マンションの売却価格が低く、売ってもローンを完済できない『残債(ローン)>売却価格』状態を「オーバーローン」と表現します。
売れてもローンが残るオーバーローンでは、銀行は売却を認めないのが原則です。
しかし、銀行の方針により、売却後にローンを返済し続けるなら認める場合もあります。
たとえば返済が苦しく売ってローンを減らし、減額すれば毎月継続して返済できる金額に減るので、売却→ローンの一部を返済→残ったローンを継続返済というケースなどです。
とはいえ、売却したあとに賃貸住まいになると家賃とローンをダブルで返済することになるので、たとえ銀行がOKしても返していけるのか自問自答しなければいけません。

私の場合、自己資金で前もって返済するのはあり得ないので、ローン以上の金額で売らないといけないんですね。なんだか心配になってきました。

たしかにそうですね。不動産を売るのはそう簡単なことではありませんし、時間もかかる場合が多いです。でも、確かにローン完済が可能な金額以上で売れれば理想的ですが、あまり時間がかかるようでしたら、一度ご相談ください。

そうですね、まずはそうならないように売却へエネルギーを注ぎます

売却にも2つの違いがある、任意売却と競売

ここまで売却の話しを続けてきましたが、実は売却にも2種類あることをご存じですか?
売却には「任意売却(略してニンバイ)」と「競売(銀行などではケイバイと読みます)」の2つがあるのです。

自分で「売る」~任意売却

任意売却とは、所有する不動産を自分で買主を探して、あるいは業者に依頼し買主を探してもらい売却することです。要は一般的な売却のことですが、ローンが残る場合に債権者(お金を融資した銀行など)の許可が必要(上述)になるなど、ふつうの売却とは違う部分もあり「任意売却」と表現されています。

裁判所経由で「売られてしまう」~競売

これに対し、競売とは法的手段を使って不動産を売却する方法です。
競売では、裁判所が購入希望者を募り、競争入札の形で購入希望者を募ります。
ケースにもよりますが、売却以前にその不動産を差し押さえたり、立ち退きを命じられたりします。場合によっては法に則り強制的な措置(強制執行)も行われます。
返済が不可能になった場合や、逃亡など緊急に売却を必要とする場合にとられる方法です。

任意売却と競売

売却の方法価格買う人周りに知られる可能性
任意売却一般的な売却と同じ購入希望者との交渉で高く売ることも可能一般人や不動産業者当事者間なので知られる心配は少ないただし売却チラシやネット広告で写真などが拡散すると知られてしまうことも
競売裁判所経由で競争入札足元を見られ、価格は低くなる傾向がある競売物件専門の業者など、いわゆるその道のプロ競売の前に差押があり「管理物件」の看板が立つなど、周りに知られてしまう可能性がある

引用:裁判所/売却に関する事項/競売物件検索

オーバーローンとアンダーローン

文中で「オーバーローン」と出てきましたが、オーバーローンは銀行や不動産業者などが使う意味には2種類ありますので、ここで違いを含め表にしてみました。

銀行の用語として不動産の用語として備考
オーバーローンローンが担保や売却予定の不動産の価格より大きい「借金がオーバーしている」不動産購入で頭金を含めて借りること不動産では頭金として自己資金を準備するのが原則なのでこの点から「ローンがオーバーしている」頭金まで借りることを「フルローン」税金や印紙代、保証料などの諸経費まで所要額をすべて借りることを「オーバーローン」と呼ぶ場合もある
アンダーローンローンが担保の評価範囲内、売却予定額以下「借金が下回っている」不動産購入で頭金を抜いた金額でローンを借りること

オーバーローン、アンダーローンは家づくりで登場する言葉

オーバーローンやアンダーローンという言葉を皆さんが耳にするのは、おそらく自宅の新築やマンションの購入などの場面で、営業マンや銀行員が使うタイミングでしょう。
この場合の意味は「不動産の用語として」の部分を参考にイメージすると、会話にもスムーズについていけると思いますので、ぜひ覚えておいてください。

築古マンションだとローンの有無に関係なく売れにくい3つの理由

ローンが残っているマンションでも売却が可能と解説しましたが、新築マンションの販売もあるので、やはり築古マンションだとローンの有無にかかわらず売れにくいのが現実です。
そもそも新築マンションとは「未入居かつ建築後1年未満の物件」が定義なので、それ以外は築2年でも築30年でも築古マンションとひとまとめになってしまいます。
いきなり出鼻をくじくようで申し訳ありませんが、これも事実の一つです。
ここからは、築古マンションが売れにくい理由を3つあげてみたいと思います。
ただ、筆者としては売れにくいとは言いましたが、絶対に売れないとは考えていません。
ですから、後半では売るためのコツもお話ししますので、ご安心ください。

売れにくい理由1.住宅取得控除が使えないから

住宅ローンを借りてマンション購入や自宅新築などをした場合、最大13年にわたり、その年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税額から控除できる減税制度が「住宅取得控除(いわゆる住宅ローン減税)」です。
現行制度では建築から20年(マンションなどの耐火建築物は25年の場合も)以下で無ければ住宅ローン控除を受けることができません。
したがって、築年が経過した築古マンションだと住宅取得控除が使えず、敬遠されてしまう可能性があります。
(注・令和4年度の税制改正ではこの要件が廃止される予定ですので、今後は築古マンションでも住宅ローン控除を受けられる可能性は高くなるかも知れません)

引用: 国土交通省/住宅ローン減税

売れにくい理由2.外観と内装が老朽化してしまうから

年を経れば古くなるのは当然と言えば当然です。
とはいえ、いろいろと困って売るのですから、リフォームする人はまずいません。
ですから、見た目が劣ると第一印象で売れにくくなることは否めません。
とはいえ、お金をあまりかけずDIYでもやれることはあります。
たとえばホームセンターなどで洗剤や用具を購入し、マンションの自室周りだけでも掃除するとか、ベランダもきれいにするくらいでも見た目の改善になります。

ちなみに元喫煙者としての経験から申し上げるのですが、タバコはやめたほうが良いです。
これは健康のためとかの理由ではなく、タバコは部屋を劣化させるからです。
私の場合はアパートでしたが、ヘビースモーカーだったためヤニや匂いの除去費用として、アパートを退去するとき30万円(!)のクリーニング代を請求されました。(たまたま大家さんが取りなしてくれたので費用は安く済ませてもらえましたが)
煙草を吸うなとか酒を飲むなとか(どこかで聞いたようなフレーズですが)、売却を考えているなら少なくともマンションでは煙草を吸わないように、これは経験者からのアドバイスです。

売れにくい理由3.耐震基準

地震や災害への意識が高まっている現在では、耐震基準をはじめとして、さまざまな基準・規制を築古マンションはクリアできていない場合があります。
繰り返しになりますが、購入者は物件を多くの中から選ぶことができるので、検索条件で「耐震基準を満たしていない」などと外される可能性はあります。
とはいえこのように耐震基準などは個人でどうすることもできません。
背に腹は変えられないので、値段を下げることも考えるべきかも知れません。

ローンが残っているマンションはこうして売却される!売却に立ち会った銀行員の体験談

ここで、銀行員としての経験談から実際にマンション売却がどのように行われるかを、時系列的にまとめ解説します。

ローンが残っているマンションはこうして売却される
  1. 売却を許可したら、事前に顧客から「全額返済申込書」など完済する手続き書類を銀行が預かっておく(売却時に即ローンを返済させるため)
  2. 売却には銀行員が立ち会うのが原則(自分も何度か立ち会いました)
  3. 一般的にはマンションを買う人も銀行でローンを借りるケースが多いので、借りる銀行で売却手続きをする
    したがって他の銀行で売買をするなら自分(銀行員)が出向くことになる
  4. 「抵当権解除証書」(担保を解除してもいいという書類)を持っていくが、これはローンの完済を確認するまで絶対に渡さない
  5. 売買書類などのチェックも終わり、司法書士からOKサインが出れば、私が勤務する支店に電話で「売買が成立しましたので、ローンの完済をしてください」と連絡
  6. 買主に住宅ローン融資金金が入り→売主(自分の顧客)の口座に売買代金が振り込まれる→支店でローン完済処理をして→完済になったら自分に連絡が来て→抵当権解除証書を初めて司法書士に渡す
  7. ローンは完済となり担保も解除、この時点でマンションは自分のものではなくなる

任意売買とふつうの売買、最大の違いは銀行員が登場すること

ざっと流れを見ていただきましたが、任意売買がふつうの売買と最も違うところは銀行員が登場してくる部分です。
銀行は住宅ローンとしてお金を貸している債権者なので、当然ですが融資金を回収しなければなりません。
売主や買主が善良な人ばかりなら良いのですが、中には悪い人もいて不動産の売買、特に借金と担保が絡む売買では不正や犯罪も起こることがあります。
そこで、上記したような「銀行員は、ローン返済を確認するまで担保を解除する書類を渡さない」というような場面もあるのです。
とはいえ、そのほかの内容はふつうの売買と同じなので、ほとんどの任意売買は粛々と事務的に手続きが進むもので、おおむね1時間程度で全てが終わります。

やっぱり築古のマンションって、そう簡単に売れないものなんですかね?私の場合、銀行さんにお許しをいただいてからにしようと、まだ不動産屋さんとは話をしていないんですよ

銀行からお許しなど、恐縮してしまいますが、たしかに任意売却の流れを考えると、自由な売買とは言い切れないですね。 ただ、それと関係なく築古マンションが売れにくいというのは事実ですね。一時期に比べて鈍化しているとはいえ、まだまだ新しいマンションの建築は続いているようですから。購入する人から見れば選択肢はたくさんあるので、築古でも『ここが売り、というセールスポイント』が必要になりますよね

なるほど、ではセールスポイントってどんなものですか?ぜひ教えてください!

はい、セールスポイントとは言ってみれば売るためのコツみたいなもので、それを理解するには、まずどうして築古マンションが売れないか?その原因から見つめてみる必要がありますね。そのほうがコツもスーと入ってくると思いますから

なるべく空家にすると、ローンのあるマンションでも売却しやすい

マンションに限らず、人が住んでいると内見は難しいものがあります。
売ると決めたなら、できる限り空き家にするべきです。
もちろん人それぞれ事情があるので、空き家にするのが無理でも、たとえば内見希望者があった場合に、一部の部屋や設備だけでも内見できるように片づけておくなど、工夫を考える必要があります。

無理にリフォームしない

費用の問題もありますが、売却するマンションではリフォームが無駄になることがあります。
売れにくい理由のひとつと説明したのですが、リフォームしてマンションの見た目や設備が新しくなっても、そのリフォーム費用は売買価格に上乗せできないことが多いのです。
また、購入希望者も築古マンションを希望するのは、自分好みに直したい気持ちを持っているかもしれません。
ですからその場合もリフォームは無駄になってしまいます。
上手に売るには、無駄にリフォームしないのもコツと言えます。

銀行員に相談すると、上手くすすむことも

銀行員に相談すると、売却が上手くいく場合もあります。
たとえばマンションを欲しい人の情報があれば、引き合わせてくれるかも知れません。
なぜなら銀行員にして見れば、新規の住宅ローンが獲得できるからです。
また同じような理由で、不動産業者を紹介してくれることもあります。
こちらも顧客(この場合は売主)を不動産業者に紹介することで、その不動産業者とパイプができますし、その会社に事業資金融資の売り込みもしやすくなるからです。

銀行員が直接売買の仲介にあたる行為をすると、これは宅建業法など法律違反になる恐れもあるので、あくまで間を取り持つだけです。
とはいえ、こう言った意図があるので銀行員は親身になってサポートをしてくれます。
顧客のためだけではなく裏がある話(銀行員にもメリットがある)ではありますが、利用できるなら使わない手は無いと銀行員の私は思います。

なるほど、銀行員自身にメリットがあるから親身になってくれるという説明は、非常によくわかりました(笑)

まあ、そういわれると返す言葉がないのですが、まあ今風にいうなら『Win-Winな関係』といったところですね。でも、お客様が喜んでくれれば嬉しいというのは、本当の気持ちですよ!

ただ空き家にするのは、私の場合無理ですね。他に家がありませんし、いつ来るかわからない内見希望者のために家を空けておくなんてできないですね

そうですね。任意売却をすすめる記事とかでは『空き家にしておかないと売れません!』などと書いてあるものもありますが、これは現実的な表現とは言いにくいですね。

そうすると、教えてもらったコツを実践するのは無理そうですね

いえ、自分に合ったやり方に修正するという考え方もできると思います。
たとえば内見にしても『現在も住んでいますし、そのままで良ければどうぞ!』と注意書きをしておけば、人によっては気にしない場合もあるでしょう。また見せる部屋と見せない部屋に分けておくのもいいかも知れませんね。ただ、お子様がいらっしゃる場合などは内見者の人と鉢合わせしないように配慮が必要でしょうし、やはりある程度のことはお子さんにも話された方がむしろ傷つかないかも知れませんね

なるほど、ダメだとあきらめる前に自分ならどうするか?を考えてみます

まとめとして~ローン残積があるマンションも、上手に売却するコツをおさえましょう

今回は「ローンの残債があるマンションは売れるのか?」をテーマに銀行員が自分の経験も含めて説明してきました。

いろいろ話しを聞いて、住宅ローンが残っているマンションでも、条件をクリアすれば銀行は売却にOKしてくれるとわかって、安心しました

ええ、ただ築古のマンションは売れにくいということを意識したうえで、それでもコツをつかめば売れる可能性が高くなることも、忘れないでください。

はい、今までは不安ばかりでしたが、なんとなくハードルを超えられて、売却というゴールが見えてきた気がします!

皆さんもAさんのように、この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

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加藤 隆二

執筆者

保有資格: FP技能士2級。

勤続30年以上の現役銀行員 。事業資金調達から、住宅ローン、カードローンなど借入全般に従事。銀行員として数え切れないほどのお客様と会い、相談に乗り、一緒に悩んだ経験では誰にも負けません。

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